2013/04/20

豊島

直島から豊島へ。
ずっと訪れてみたかった島。
港に着いてそこからバスに乗り豊島美術館に向かった。

この建物は何なの。UFOみたいなお皿みたいな陶芸みたいな白くて丸い美術館。
緑に囲まれた場所にこの真っ白い建物の存在感ったらすごい。

館内は、この美術館の設計を手掛けられた西沢立衛さんと内藤礼さんの「母型」という作品とが融合していて、初めての感覚を体感した気がする。
湧き出る水滴が合わさっていく様子、大きな丸い穴から入ってくる光や小鳥の鳴き声、それらを眺めるひとびと人間。「私たち人類です」っていう気持ちが登場してクスッとなった。人工物によって自然を感じることも出来るんだなって思った。私たちが「地球」と呼んでいるこの星は自然がいっぱいですということを半信半疑だけれど感じることができた。宇宙人に語りかけるように。

それから別の建物になるんだけれど、カフェ&ショップがある。
ここも素敵だった。
美術館近辺には棚田があったり、きれいな景色がたくさんで、突然目の前に現れる。

どこか懐かしい風景。そんなはずはないのに不思議。

豊島美術館から坂を下りてずーっと歩いて心臓のアーカイブへ。この場所では世界中から収集された心臓音を聴くことができたり自分の心臓音を録音することができるんだけど、正直なところ 私はとても苦手だった。他人の心臓音を聴くなんて、無理だ。自分の持ってる脈打つ心臓と外から聴覚で認識するものって違い過ぎるもの。
これがもし、好きなひとの心臓音だったら心地良いこともあるんだけど。
例えば恋人の胸に耳をくっつけてみたりして。
ドクドク動いて大好きなひとの血液を循環させている音は心地良い。

それからまたバスに乗って今度はストーム・ハウスと島キッチンに行き、そこからまたバスに乗り最初に着いた港に戻ってその周辺を散策。
盲目の旅芸人小林ハルさんをモデルにした鉛筆画が展示された空家を観たり、いちごのクレープ食べたりした。

そして、今年の7月にオープン予定で工事中の豊島横尾館をぼーっと見つめた。
オープンしたらまた訪れたいよ豊島。

直島

三度目の直島の旅。

島に着いて、まずは今年3月にオープンしたANDO MUSEUMへ。
築100年の古民家の外観からは想像出来ない内観。
安藤忠雄さんの象徴がこの中に詰め込まれていた。

外で写真を撮っていると、安藤建築好きのおじさまが目を輝かせながら声を掛けてくれた。「安藤好きにはたまらん」ミュージアムだと云うこと。




三度目の地中美術館は、以前よりも素晴らしく見えた。
春のこの時期に訪れてみると、桃色や紫色をした花々が咲き誇っていた。紫色が大好きなのでウキウキ。
紫色の虜。

自然光で鑑賞するモネの「睡蓮」がとっても好きで、足元に敷き詰められている大理石の白さが視覚からの安らぎを与えてくれる。ぜひ寝転びたい。

それからジェームズ・タレルも好き。
体感するアートは、やっぱりたのしい。
味わいも深まる。


この日は念願のベネッセハウスに宿泊。
廊下など基本的には打ちっぱなしコンクリート。しかし、それぞれの客室内は安藤忠雄建築には珍しい木造になっているのがこのビーチ棟。海が臨める素敵なお部屋で、遠くに草間彌生さんの「南瓜」を見ることができる。
チェックイン後に部屋に荷物を置いて身軽になってから、ベネッセハウス ミュージアムへ。今回の直島訪問で私が一番たのしみにしていた「国吉康雄展」を観た。
もう、大満足。とってもよかった。彼は20世紀前半にアメリカを拠点に活動していた洋画家。特に40年代の作品でそのなかでも戦後のものが震えるくらい好きだった。わぁ!って思ったら目が潤む。
「恋人たち」「ここは私の遊び場」「少女よお前の命のために走れ」「安眠を妨げる夢」など。
「ここは私の遊び場」「少女よお前の命のために走れ」はシュルレアリスムなんだろうかどうなんだろう、少女が大きな昆虫から逃げようとしているところだったりする。
 彼の作品は、翌朝にミュージアム内のレストランで朝食をとった後にもう一度じっくりと鑑賞した。ミュージアムの造りもとても好きで、クリアになった頭のなかに彼の作品がすんなり入り込んで来た感じだった。
本当によかった、あーよかった。

それからテラスレストランで美味しい夕食を味わった後に、ベネッセハウス内に展示されている作品を鑑賞するツアーに参加。 杉本博司さんの「光の棺」を中心にパーク内の作品を堪能した。

いろんな素晴らしいものを一度にたくさん観たからなのかどうなのか、真夜中にちょっとした恐怖感に襲われた。
けれどそれも束の間、疲れていたしすぐに眠りにつけたみたい。

2013/04/03

デタラメ

「他人の想いなんて考えるだけ無駄」と言われたことがある。
なぜかと尋ねると「日本はこんな形してますって示されるけれど、地球を宇宙から見たことがないのでそれが本当かどうかなんてわからない。それと同じ」とのことでした。

半分納得して半分悲しい気持ちになった。
(って書いてみたけど、そこまで悲しくはないかな)
もう2年以上も前の話。

だけど、本当にそれってちょっと重要だったりする。
他人の心のなかって考えても想像してもわからないんだから、思いやりを持ちつつもそこは考えるべきではないなって。

考えたって、「もしかすると」しかないんだから。

私が今まで陥ってしまってたこの他人の想いに配慮していると云う見せかけは、必ずしも良い結果を生むとは限らない。

考え過ぎて身動きがとれなくなる。
他人の感情を優先している気になるだけだった。
想定しているってだけ。

もう、自分の気持ちを素直に伝えればいいよって思ってます。

2011/08/31

魔法

アパートまでの道のりを私はゆっくりと歩いた。
見慣れた商店では夕食の献立に頭を悩ませているのであろう女性たちが黙々と品定めをしている。

角を曲がると、入り口に藤棚のある茶色い外壁のアパートに辿り着く。
真夏の太陽に照らされて青々と輝く緑に、季節の移り変わりを感じずにはいられない。

その下を通って真っ直ぐ中へと進み、エレベーターは使わずに5階まで階段をゆっくりと昇りながら鞄の中を探りキーケースを取り出した。

クリーム色のドアの前に立つ。
キーケースの中から半年振りに選び出されたその鍵は、私の手にしっかりと馴染む。

ドアを開けると新しい風が吹いて来て、私は迷わず中へと足を踏み入れた。

すっかり片付けられた部屋、窓は開け放たれて心地良い初秋の風が私を宥めるように柔らかく、心の隙間を次々に通り抜ける。

玄関には雑誌の束が白いビニール紐で縛られ乱雑に置かれていた。
私は彼の細い腕のしっかりとした筋肉のことを思った。

かつてのリビングルームの片隅には、いつか彼が描いてくれた私の絵が額縁におさめられてあの頃のまま輝いている。
それは22歳の誕生日に彼から貰った私の宝物で、一生手放すことは無いはずの魔法だった。

リビングルームの奥にある書斎だった部屋に入ると、フローリングの床の上に置かれたコーラの空き缶がぽつんと音を立てた。
その縁では、煙草の吸い殻が風に揺れて小さく踊っていた。

彼は何も無くなったこの部屋で何を想っただろう。
もう遠く未来のことを考えているのだろうか。
それとも、絶望している?
恐ろしい記憶がよみがえってきて、こわくなった。
彼には生きていて欲しい。
幸福を感じて欲しい。
そんなこと思う資格なんてないのかもしれない。
彼は泣いて謝っていた。
どうしてこうなってしまったのだろう。

これから始まる新しい生活に甘い期待を抱いていたあの頃に戻ったようで、涙が溢れた。
ここに居てはいけない。
足早に玄関に向かう、もう何も思い出したくなかった。

玄関のドアの前で振り返り、もう一度部屋を見渡した。
この部屋には何の思い出もない。その代わりに積み重ねられた感情も、今はもうどこかへ消えた。

私は靴箱に残しておいた黒色のローファーを手に取ると、持って来た紙袋に入れてこの部屋を去った。

キーケースから鍵を取り外し、ポストに溜まった郵便物の下に隠した。

あの部屋に残された私の絵は、彼の手によって捨てられるはずである。
その時が来たら、彼は私のことを思い出すのだろうか。
あの頃の自分の気持ちを認識するだろうか。
涙なんて、流すだろうか。あの日とは違う涙を、流すことが出来るのであろうか。

私にかけられた魔法は、随分前に解けてしまった。